慣行農法は、結局のところ規模の勝負であり、資本力が大きく左右します。現在は、法人化の始まりで、さまざまな企業が参入していますが、いずれ販売力も備えた、商社などの参入も予想できます。(
中国などでは既に、日本の商社が現地で農業会社を経営していますから、栽培ノウハウがないわけではありませんしね。)
勝利条件が規模の大きさであることを念頭に置けば、その路線の先には農業法人化推進による巨大企業群の参入・農地集約があります。近年の JA の権限縮小、法人の農業参入条件緩和と言った法改正は、この文脈から見ると明らかで、将来的にも必要な法改正が進むことは確実な未来です。圧倒的に有利な資本力がある法人の新規参入が、現実になるんですよ。
現在でも、その兆候( 後述 )は見て取れるわけで、中途半端な規模の農家は、小規模を自給的農家、などと呼んで軽視しますが、中規模農家も JA も肉屋に媚びる豚になっていますね。
大規模法人が本格稼働し始めたら、そのコスト低下に合わせて米生産者価格を下げてきますから、中規模農家を含めた農家の離農が相次いで、大規模法人への農地集約は一気に進むでしょう。今は米専業
30 反以上ですが、これから 50 反、100 反、200 反以上になるということです。ほとんどの農家が成立しなくなりますよ。
ゲノム技術への執着度合いを見ていると、さほど遠い未来ではないような気がします。
敷衍するなら、私は除草剤耐性遺伝子組換え米種子の開発はメーカーにおいて既に済んでいると考えています。しかし、現状では小規模農が未だ多く、遺伝子組換え種子を販売しても、恐らくマーケットには受け入れられない。大規模農として、自分で栽培するのが早い、と考えているでしょうね。そして、その方向への法改正が進んでいる、ということです。
小規模農家は早く潰れて整理してほしい、などと発信する、頭がかなり馬鹿な農家が居ましたが、今現在、大企業化の過程なんですけれどね。三日天下に浮かれて、どうする!
米価 10 倍と言う本があります。その切実な思いは、今もなお私をとらえて離しません。
「 農業問題は、 結局のところ販売価格下落がもたらしたもので、補助金で代替しなかった行政に責任がある、生産コストが下がらないのがいけない、と言うのはマヤカシに近い 」と考えています。
現在の様に、慣行栽培における効率化推進が当然視されている一方、有機栽培の動きが出てきていることは、大きなチャンスと考えています。
米も野菜も規模拡大によるコスト低減を促進することで、農家において規模の混在が起きています。米農家が先行しましたが、野菜農家も離農が増えているようで、前に来た道ですね。野菜では、需給ではなく、国際競争力と言う呪文が使われていますが、結局は小売価格を下げる方便でしかない点では同じことです。
日本のように、国土を限度一杯にまで、新田開発した国では、小規模農家が生き残れないようになるような規模拡大競争政策は、農地減少しかもたらさないです。
私は、食糧管理制度を廃止して以来、この流れは明らかだったにもかかわらず、減反を始めその傾向を助長した行政の失策は、将来的に責任問題になると思います。さらに、野菜にまで同じ政策をおこなう愚行と言い、早急に、大きく路線変更をする必要があると考えています。
とは言え、こういう状況の中であっても、小規模農に可能性があります。
有機栽培は、その一つの可能性であるものと考えています。だからこそ、有機栽培に行政の力が今一つ入らないのでしょう。
このように慣行農法の方は、行政により規模拡大が促進され、小売価格水準が大きく下落し、ある程度の規模でなければ、成立しないレベルにまで、落ち込んでいます。5
反では慣行農法で商品が作れても、総売上高が小さいですから、なかなか厳しいです。
出発点が低すぎるので、価格を上げるのは大変です。しかし、有機栽培( 無農薬栽培 )の場合、実績で米で慣行農法による小売価格の 4-7 倍ほど、1,000
- 1,800円/Kg になっていますし、野菜ではセット販売が基本です( 収穫できたものを農家が組み合わせて販売する。農家にしてみれば、無駄が無い
)。
そして、需要な点は、有機栽培( 無農薬栽培 )の難しさゆえに、営農規模に限界があることです。家族で取り組む場合、できるのは 10 反( 1
ha )がせいぜい、どんなにがんばっても 15 反( 1.5 ha )でしょう。
雑草がすごいですから。手/機械除草による有機栽培( 無農薬栽培 )では、まず雑草が面積制約条件になります。
慣行栽培では、5 反で、2,500 Kg。年間売上 62 万円、それに対して、外部流出費用が、48 万円ですから、年間 14 万円の手取りです。もちろん
労務費 = 0 で計算しています。※
年間 14 万円。毎月 1 万円では、新規就農なんてしなくなります。米の値段が、異常に安いと評価しても、間違っていないでしょう?
でも、行政は、5 反( 1,500 坪 )で 2.5 Ton の玄米を作っても、まだ営農面積が小さ過ぎると言うのです。この人たちは、一体何なんですかね?
この規模で作る農家が、食糧安全保障に貢献していないとでも?少なくともこのレベルからは最低所得補償をしたらどうですか?
有機栽培( 無農薬栽培 )は、全く別の道です。営農規模は 15 反ぐらいまでの制約があるので、その範囲内の規模同士による競争しかありません。資本力を背景にした過当競争により、小売価格が下がりすぎると言うことにもならないでしょう。
それに、有機栽培( 無農薬栽培 )の栽培技術は、限りがありません。答えが無く、同じ無農薬栽培でも、経験と知恵・工夫で、大きく収穫に差が付きます。競争は、栽培技術が中心になると思います。
手取り価格を、1,242 円/Kg( 慣行 248 円/Kg の 5 倍 )とすれば、収穫量が、50 %ほどになるので、
・ 5 反で、玄米 1,250 Kg 手取り 155 万円、外部流出を除く限界利益が 107 万円、
・10 反で、玄米 2,500 Kg 手取り 310 万円、外部流出を除く限界利益が 213 万円となります。
これは、慣行栽培の場合の
・30 反で、玄米 16,050 Kg 手取り 399 万円、外部流出を除く限界利益 171 万円 よりも、少し良い数字です。
ここで言う限界利益が、農家の年間総所得に当たります。これは、農産物販売による収支だけで、他に補助金などが加算されますが、おおよその傾向としては、こういう具合です。
慣行栽培では、米専業 30 反と言いますが、玄米 16 Ton 生産して 399 万円の収入になり、ようやく年 171 万円ほどの収入になります。16
Tonですよ。それで毎月 14 万円の収入、、、生活保護よりもましだけれど、かつかつですね。
私は、このような薄利多売の路線ばかりではなく、決して今は需要が大きくはないけれども、十分な差別化が可能な方向も別にあると考えています。その一つが、有機栽培です。
なお、有機栽培( 無農薬栽培 )の方で、売上高ではなく、手取り額と区別しているのは、流通形態が異なるからです。以下のアンケートでは、複数回答が許されていて、総計が
100 にはなりませんが、有機栽培の農家は、6 割以上の方が通販などによる直販を採用しています。
( 引用:「 有機農業をめぐる事情 」 農水省生産局農業環境対策課 2018 年 12 月 )
全国に 0.5 %が散らばっているので、現時点では拠点販売に向きません。
それに、特別栽培農産物などとは全然違うこともきちんと説明したいし、、、50 %減はあまり意味がありません。
アルコールでもそうでしょう。ビールコップ一杯飲めない人は、半杯だって無理ですよ。脳への影響に関する個人差って、すごく大きいんです。90 %減くらいでないと、ほとんど意味が無いです。
そう考えると、有機栽培( 無農薬栽培 )農産物は、サイトで説明して販売するのが、適しています。6 割以上の方が、インターネット通販を用いているのは、その証しでしょう。その場合の農家手取りは、店舗販売よりも増えます。販売流通マージンを削る工夫をした上での、手取り 5 倍です。
※収益計算の前提
慣行栽培 相対取引価格 = 14,844 円/玄米 60 Kg;農水省 2021 年 2 月相対取引価格・数量( 速報値 )
慣行栽培 生産コスト=農水省資料 「「 販売 」を軸とした米システムのありかたに関する検討会 」資料 2008 年 6 月より、作成。農地規模別全国平均生産コスト
有機栽培 生産コスト=上記全国平均生産コストより、農薬費・肥料費を除外
慣行栽培 相対取引価格 = 卸価格、生産者価格、農家の手取り;消費者への小売価格は、これより高い。
有機栽培 手取り価格 = 通販による直販を含めた、農家の手取り
長くなりました。以下は稿を改めます。
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