私は、この時期の種子法廃止に始まる一連の法改正の目的は、日本の主食である米を、除草剤耐性遺伝子組換え米種子により生産させることにある、と考えています。強行採決ではないものの、短期間で立法を押し切った理由が、他には見当たらないのです。
これにより、農薬メーカーは、日本国内で除草剤耐性遺伝子組換え種子の販売が期待できるとともに、除草剤の抱き合わせ販売市場が倍増することを期待してのことと考える見方があります。バイエル(
モンサント )が一農薬メーカーから巨大種子企業へと企業規模を拡大した道の、日本版二番煎じです。
しかし、除草剤グリホサートは、その作用機作が特殊・新規で、1974 年の販売開始以来約 50 年、未だに人間への健康影響が議論されている農薬です。
特に、人間の腸内細菌叢への影響は、腸内細菌叢自体が個々人により、また、日々の体調により変化するものであり、腸内細菌叢の機能自体がまだ良くわかっていないことから、影響がある無いにつき、議論が続いています。(
木村-黒田 in-vitro 2012、Wagis Ackermann,Manfred Coenen in vitro 2014、Michael Antonoiu, Robin Mesnage in-vivo 2021 )
人間の腸内細菌叢と言う固有の器官に対する影響を指摘しているにもかかわらずに、農薬工業会は in-vitro での評価は意味が無いなどと主張しますが、何故 in-vivo( 動物実験 )でないとダメなのか?頭の構造が不明です。in-vivo( 動物実験 )でもダメでしょ。
動物の腸内細菌叢は人間のものとは違うでしょう?たとえ in-vitro( 実験室での試験 )であっても、人間の細菌叢で評価した方が近くありませんか?
指摘に対して、謙虚に、これはいけない、人間に影響があったらどうしよう、指摘ありがとう、もっと調べよう、と言うのが、食に関わるメーカーの態度として賢明ではありませんか?
例えば、ネオニコチノイド系統殺虫剤について、農薬工業会は以下の反論をするんですね。( 農薬工業会のサイトで、週刊誌の批判に対する農薬工業会見解として、公開しています。)
でも、in-vitro( 生体外での実験 ) と in-vivo( 動物実験 )は異なると得意がって反論しても、in-vivo だって、所詮は動物実験なんでね。ラットの脳の重さ・外形を比較しているだけで、OECD の古い評価試験ガイドライン( TG-424 )に基づいた方法なんです。新しい評価試験ガイドラインとして、迷路通過時間を比較したり、明暗に対する反応時間を比較したりする方法が OECD から提案されていますが、農薬メーカーにはほとんど採用されていませんね。というのは、少しラットの頭を働かせて、脳の状況を調べようとすると農薬を与える与えない以外の要素(
例えば、被験ラットがオスかメスか、それに対して、実験者が男か女か、など )が、実験結果に影響してしまいます。
こうなってくると、沢山調べてそういう要素の影響を確認し、影響を減らしてゆかないといけないから、ラット数を増やさないといけなくなります。コストがかかるし、どこまで増やせばうまくゆくのか正直良くわからない。
農薬メーカーの技術者が検討しているとは思いますが、評価コストとの兼ね合いもあり、なかなか成案が出ないのでしょう。ドン・キホーテ仕事に一生を賭けるのも、可哀そうですが、どうしても農薬を売って利益を得たければ、こういう仕事もきちんとやってもらうしかありません。
脳の重さを計るだけの科学的安全性評価試験は、簡単明瞭なのですが、この実験で人間への健康影響を予想するのに充分なのかどうか?得意がるのは良いが、お前、古い
TG-424 で充分と思っているのか?
言上げし過ぎなんだよ。
私が、見切り発車と言うのはこういうわけで、農薬メーカ技術者による、充分なものに近づける努力には敬意を評するものの、現状、その実態を知れば、農薬を避けたくなります。
少なくとも農薬工業会の言う通りに、科学的安全性評価は確認されています、とか、御用学者の言う様に、科学的安全性評価試験方法は歴史的に長期に用いられて、信頼できるし、確立している、とは、全く思えないですね。お前ら本当はわかっているくせに、としか感じない。
こう言った発言は、OECD による新しい科学的安全性評価試験ガイドラインTG-426( 2007 年 )が存在することと矛盾しています。内閣府食品安全委員会も、脳の重さ比較だけTG-424( 1997 年 )で OK を出しています。
農薬メーカーや御用学者の言うことをそのまま真に受けないで、現時点での彼らの実力を良く見極めて、農薬に対する態度を決めた方が後々後悔が無いな、と感じています。
( 引用:農薬工業会サイト 週刊新潮 第 4 回 2020 年 4 月 9 日号に関する農薬工業会見解 )
除草剤グリホサートに戻ると、
人間の腸内細菌叢に影響があれば、不安などの不定愁訴、あるいは、過敏性腸症候群の一原因であるとする研究もありますし、栄養吸収に影響し肥満などの原因となります。
まだまだ、腸内細菌叢の人体内での機能には良くわかっていない部分が多くあります。そして、腸内細菌叢への影響も人間固有の器官であることから、動物実験では充分に確認できません。
不定愁訴は、即時に生命を落とすような話ではありませんので、理由がわからないままに我慢されている方も多いでしょう。
過敏性腸症候群も生命を落とすようなことはなく難病指定をされていませんが、数多くの患者がいて、増加している病気です。疾病の原因解明ができておらず、治療方法は存在しません。多くは、ストレスなどが原因と診断され、アッパー系の精神病治療薬を処方されることが多いようです。
これらは除草剤グリホサートを抜くだけで解決する場合があるかもしれません。肥満対策にもなるでしょう。
米国では、その必要性から、グリホサートが大いに受け入れられましたが、日本では事情が違うので、グリホサートの安全評価がこういう状況で、議論の余地を残していることを考慮すると、農薬メーカーがグリホサートを日本国内で拡販と言う夢を見るのは大変に迷惑です。水田では、土壌喪失の問題は起こりません。
さて、除草剤グリホサートの危険性はこれぐらいにして、遺伝子組換え種子の方です。
遺伝子組換え技術に関しては議論が様々なされ、人間の健康への影響に関する専門家の議論はまだ結論が出ていないように思います。
相変わらず、動物実験で確認できる、大丈夫と言う、ゲノム技術安全プロパガンダもありますが、動物実験の限界が、化学農薬の場合と同様にあるので、仮に現在の安全性評価試験をパスしたとしても、当面は様子見をお勧めできます。
遺伝子編集農作物は、所詮は、遺伝子欠損型の奇形種です。例えば、背骨が曲がった奇形魚を、背骨以外は大丈夫として食べるのは、大変に勇気がある人だな、と私は思います。
ゲノム技術安全プロパガンダも始まっているようですが、プロパガンダの多くは結局のところ、国が決めた安全性評価試験( 動物実験 )をパスしているから大丈夫、という陳腐なクリシェに過ぎず、頭の不自由さを感じます。毒性学や遺伝学を独習した気になるのは良いのですが、事は食の安全だけに、無責任な安全論によって、実際に健康被害が起きたときにどうするつもりなのか?
遺伝子編集農産物は、現時点では、栄養強化食品のようなものが中心で、私はリスクを賭けてまで食べる気になりません。はっきり言って、この程度の改良にとどまる遺伝子編集種子が、周辺の圃場におかしな交雑を撒き始めているのであり、それを食べる以前にそれが引き起こす交雑にすら大変に脅威を感じています。早急に交雑に関する規制立法をおこなって欲しいと思います。別稿の様に、環境省は、カルタヘナ法により圃場周辺の農産物への交雑をまったく規制するつもりがありません。
問題は、米国ですらその主食である小麦には、遺伝子組換え種子が使われていないにもかかわらず、日本では主食である、米種子市場が民営化されたことです。( 種子法廃止 2017 年 3 月 23 日 奥原正明 農水事務次官 )
種子法廃止を境に、農薬メーカーを始めとして、大企業の米種子市場への新規参入が相次いでいます。もちろん、新規米種子販売には、研究開発にリードタイムが必要ですから、種子法廃止にある程度以上の見込みが無ければ、公共種子の供給に割って入るべく新規米種子研究を開始するという決断は、たとえ農薬大企業と言えども、個々の民間企業には大変に難しかっただろうと思います。
工事中
大量生産型の規模拡大路線は、原料( 米種子、農薬、肥料 )を与えられ、さらに上記の様に、販売先まで抑えられている場合、どうにもなりません。農家がおこなうのは、栽培業務だけになってしまいますからね。
栽培以外の業務をすべて他者に依存する場合を考えてみましょう。
では、栽培業務だけをおこなう、慣行栽培( 農薬栽培 )農家同士はどこで競うのでしょうか?なかなか競争優位を作れずに、結局加工費・手間賃扱いで、栽培業務の価値評価を叩かれるだけになりませんか?
栽培業務を競うと言っても、結局は、同じものをより沢山、より安く作る、ことしかないことになります。実は、これが米国の穀物・商品作物生産の現状です。日本と異なり営農規模は大きく異なります。巨大ビジネスです。営農規模が小さい農家は既に淘汰され、規模はおおむね同じレベルに収れんしていますが、農家間の競争力評価指標は、より沢山・より安くで、結局のところ薄利多売です。あんな農法が日本の農家にとって、目標になるんですかね。
確かに、大規模営農は大型農業機械やドローン等による農薬空中散布により、安く作れますので、消費者はお金が節約できて助かっています。しかし、薄利多売は、収穫量の変動に弱いです。気候変動などにより、農家の努力では補えない幅で収穫量が変動する農業は、もともと大規模化はあまり向かないビジネスです。
農薬が病害虫は防いでくれますが、日本では気候変動を理由とする凶作の方が歴史的には多かったんです。( ちなみに、ウンカは、日本国内では越冬できないので、どこから来ていたのか疑問だったが、10数年ほど前に、東南アジア・台湾・中国から、梅雨前線南を流れるジェット気流に乗って飛来してくることがわかっている。)
特に日本は、全農地面積が狭く、無理して大規模化しても、国際競争力と言う点では限界があります。それなのに、単に農産物小売価格だけを比較して、国際競争ガー、、、と連呼し、農政の評価・目標指標にしているのが、わが農水省です。
私はそろそろ営農規模拡大神話の呪縛から、離れても良いのではないかと考えています。
以前から、栽培業務以外を JA に渡しているのが農家の現状なのだから、大企業に渡しても同じことだよ、という意見もあるでしょう。
今は少し変質してきていますが、小規模・零細農家ばかりだったころの JA を考えてもらえればわかってもらえると思います。当時は JA と農家には一体感があったでしょう。この様に対等関係が維持できる場合もあります。
それが、一個人と JA ではなくて、一個人と大企業との関係となると、全く変わるんです。
一体感など無いでしょう?良くて協力会社、下請けの関係ですよ。大抵はコンビニの関係に近くなります。販売担当者を直接雇用するのではなく、個人事業主への販売業務委託をおこなう、と構成すると大企業側に一方的に有利になるのを、コンビニは利用しているんです。業務委託契約は対等の関係を前提にしていますからね。
もちろん、コンビニの関係について、私はネガティブです。少なくともコンビニの FC 関係の様になったら、農家は独立した自由意志での経営はできませんよ。
例えば、恵方巻の話があります。なぜ恵方巻だけが社会問題になるほど、廃棄されるのか?コンビニが独立経営だったら、店主( 個人事業主 )は廃棄したら損失だから、他の商品同様に、厳しく見込んで発注しますよね。では、なぜ恵方巻だけが?
あんなに廃棄したら、恵方巻ビジネス全体では赤字の筈です。しかし、コンビニ本部は個人事業主に売ったら、そこから先へ売れようが売れまいがそこで利益確定。廃棄損は全額個人事業主がかぶるんです。
そして、個人事業主が発注を多くせざるを得ないのは、コンビニ本部による、忖度の圧力でしょう。個人事業主が独立した経営をしていれば、他の弁当と同じ程度の廃棄率で済むはずですからね。突出して廃棄が目立つのはおかしいんです。つまり、コンビニ本部と個人事業主とで損益が対立している場合、立場が強い方の思い通りになって、個人事業主が過剰発注ゆえの廃棄損を負担しているんです。
恵方巻ビジネス全体で赤字、あるいは、極低収益であっても、コンビニ本部は所定の利益を上げ、個人事業主で大量の廃棄損が出ている不均衡は、こういうわけで、トータルでは廃棄損が大きく利益が出なくとも、コンビニ本部と個人事業主との両者の収益構造に違いがあり、コンビニ本部は痛くも痒くも無く、利益を上げ続けています。これでは、コンビニ本部が恵方巻ビジネスを自ら止める理由が存在しません。
恵方巻ビジネスの実態に合わせて、コンビニ事業の販売委託に労基法等の考え方を取り入れた特別法の立法を国会議員がしなければ、いつまでも恵方巻ビジネスの類は続くでしょう。
そもそも個人事業主の売上高をコンビニ本部がすべて把握できるのは異常で、それに合わせてコンビニ本部から恵方巻販売ノルマを課されるのでは、逃げ場が無いですね。
コンビニの話はここまでにして、有機栽培( 無農薬栽培 )の話に戻ります。
慣行栽培( 農薬栽培 )による大量生産型の営農見通しと比較すると、有機栽培( 無農薬栽培 )は随分と異なってきます。
前稿の様に、まず除草が理由で、営農規模に限界が来るんです。ヒエ科の雑草などを一本一本イネの根本近くから抜いてゆくわけですから、かなりの重労働です。家族経営なら、1.5 ha くらいまでかなと思います。
自営業者としての独立性を得るためには、沢山のお客さんと沢山の仕入れ先に加えて、競争相手が同レベルであることです。この 3 つが揃えば、安定した競争環境と独立性を得られることでしょう。
そういう観点から見れば、圃場規模の制約があることは、決して悪いことではありません。むしろこの制約により、競争相手の生産能力レベルも小規模に揃います。生産量が小規模だと、少量のお客さんを少数集めることで商品を捌けますし、農業資材の仕入れも大量仕入れによるコストダウンはできないかもしれないけれど、ホームセンターでも、どこでも買えます。
どこか一つに頼りきらない経営は、手間がかかるし、コストが割高かもしれません。大きな収益を望めないのでサイロを建設する夢?は持てないかもしれませんが、長期安定性があります。家業って堅実なものです。そもそも農地を大規模化してレバレッジを効かせるのは、資力に余程余裕が無ければ無謀なんですよ。少しばかり大きくして、僕はここまで来たと自画自賛するのは構いませんが、拡大競争に勝ち残れる資金はあるんですか?無ければ、将来の敗北が予定されていることになります。
残念なことに、圃場規模の制約は生産量の制約でもあるので、大儲けは期待できません。サイロを建てるのは無理でしょうが、そんなことは大企業や商社にでも任せておけば良いのです。どうせ巨大商社などもいずれ農産物生産に進出してきますよ。法的に障害が無いのだから、参入してこない理由が無い。
今までは、農地を農家以外が手に入れられなかったから農産物生産できなかっただけの話で、今は、一般企業でも農地を借りることができます。( 農地法
2009 年改正 井出道雄 農水事務次官 )
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