ウクライナ・カザフスタンでは、過剰収穫と肥料の投入不足を長年続けたために、栄養分を奪われ過ぎ、疲弊してきています。土壌改良と肥料投入により、地力の回復が望まれるところです。
また、地下水くみ上げなど灌漑することで、乾燥地帯に農地を拡大してきましたが、排水が不足したために、地表面に塩分か浮きあがってきた結果、農耕不能面積が拡大しています。
表土に浮き上がる塩分は、結局のところ海に流すしか、解決できないのかもしれません。その場合、排水するのに必要な分の水を余計にくみ上げる必要がありますが、現実的には水不足の問題が出てくるでしょう。
プレーリーでは、地下水くみ上げにより農地を拡大したため、一部では、塩化により耕作不能になり、また、耕作( 耕起 )による表土の軟化により、風水食を受け易くなったことで、肥沃な表土が失われています。
等高線耕作(段々畑、棚田)を丁寧におこなうこと、および、不耕起農法を採用することで、風水食を避けようとしています。
不耕起農法により、土壌浸食は抑えることができるようになったものの、耕起による除草ができなくなり、雑草に悩まされることになります。
その画期的な解決策として登場したのが、全植物を対象とした除草剤 グリホサート( 1974 年 )であり、1996 年以降順次投入された、遺伝子組換え種子です。
特に、遺伝子組換え種子の登場以降、グリホサートによる既存除草剤の代替が大きく進み、また、その省力化効果が受け入れられたことによる、除草剤使用の拡大もあいまって、現在、米国内は、遺伝子組換え種子が提供されている作物について、ほぼ 95 %以上が「 グリホサート+遺伝子組換え種子 」に置き換わっています。
さらに、農地風水食の問題を抱える一方、食糧輸出国でもある、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリア、中国などへの「不耕起農法+グリホサート+遺伝子組換え種子」の普及も少しづつ進んでいます。
不耕起農法それ自体は、即増産に結び付くわけではないですが、今後遺伝子組換え技術の進展によっては、大量投入されている肥料・水資源について、効率を改善し多収穫な種子を開発することにより、増産につながることが期待されています。
現在までのところ、遺伝子組換え種子は、直接食べる用途ではなく、主として、家畜飼料、あるいは、食用油・シロップなどの加工品用途に限定して、米国では販売されてきています。
そして、米国などから日本が輸入する農作物も、ほぼ「 不耕起農法+グリホサート+遺伝子組換え種子 」になっています。( 米国などでも、食用油・家畜用飼料に用いられています。)
( バイテク情報普及会資料より引用 )
日本国内での用途は、
トウモロコシ=家畜飼料( →骨粉、家畜糞有機肥料 )、コーンシロップ、コーンスターチ・でんぷん、食用油( →油粕有機肥料 )など
大豆 =大豆加工品、家畜飼料( →骨粉、家畜糞有機肥料 )、食用油( →油粕有機肥料 )など
ナタネ =食用油( →油粕有機肥料 )など
ワタ =食用油( →油粕有機肥料 )など
となっています。
小麦については、遺伝子組換え種子を 2020 年に向けて開発中との発表がメーカーよりありましたが、2020 年 3 月現在、米国では遺伝子組換え種子が販売されていません。しかし、プレハーベスト目的でグリホサートがほぼすべての小麦栽培に使われています。
1930 年以来、風水食によるダストボウル( 砂嵐 )に悩まされ、土壌喪失により農業の継続が長期的に脅かされていた米国にとって、不耕起農法を推進する深刻な理由がありました。
従って、少なくとも米国の栽培環境では、「 不耕起農法+グリホサート+遺伝子組換え種子 」に反対する場合、土壌喪失を防止するための代替案が必要になります。
省力化というよりも、持続可能性の問題であるということができますので、米国において、グリホサートの危険性だけでは、使用禁止が認められにくい状況があります。
しかし、日本においては、斜面の傾斜が大きいこともあり、既に等高線耕作は一般的に取り組まれ、また、水田は耕作地表面を水で覆うことにより、風水食による土壌浸食を回避していますので、米国などの様に持続可能性を脅かす問題になっていません。少なくとも「 不耕起農法+グリホサート+遺伝子組換え種子 」にしなければならない理由が見当たりません。
農地の減少は、米国などで見られる風水食害と言うよりも、むしろ、耕作放棄・大型店舗/住宅用地などへの用途転換などによって起こってきたので、土壌喪失の防止というニーズがほとんどありませんでした。
( 農水省サイトより引用 )
日本では、農業の持続可能性からの必要性は認められず、単純に手/機械除草による手間、コストアップとのトレードオフと考えることができます。
結局のところ、単に小売価格アップの問題ですので、安全・安心を重視する観点からは、他の新規農薬の場合と同様に、グリホサート、あるいは、遺伝子組換え作物については、経験的に安全が確認されるまで避ける、という進め方をお勧めできます。
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