窒素;尿素、硫酸アンモニウム( 硫安 )、塩化アンモニウム( 塩安 )、硝酸カルシウム( 硝酸石灰 )、など。
1909 年に空気中の窒素からアンモニアを化学合成することが可能になり、窒素を農業に利用することができるようになったことで、ひいては、それが、食糧の増産、人口増加問題の解決に結び付きました。アンモニアは既に長期にわたり人類が経験していて、肥料として用いても安全性の問題を回避できます。
問題は、窒素は農作物の味わい、特に甘みを増すことから、作物の増産に必要な量以上に過剰投入されることです。特に、茶・果物・野菜などには、特に甘みが好まれることから、その傾向があります。過剰投入の傾向は、有機窒素肥料も変わりません。そして、その過剰投入がもたらす、地下水汚染による健康被害の危険性が指摘されています。
しかし、農水省は、健康被害への影響はわからないとしています。
カリウム;塩化カリ、硫酸カリ、硝酸カリなど。塩化カリの形で輸入。
カリ鉱石は、カナダ、ロシア、ベラルーシ、中国、アメリカなどに偏在しており、主にカナダなどから輸入しています。埋蔵量は、310 年分ほどという農水省の試算があります。
リン;過リン酸石灰、リン安、熔リンなど。天然リン鉱石、あるいは、リン安の形で輸入。
リン鉱石は、中国、モロッコ、アメリカ、ロシアなどに偏在しており、主に中国、ヨルダン、南アフリカ、モロッコなどから輸入しています。埋蔵量は、260
年分ほどという農水省の試算があります。
( 農水省資料より引用 )
資源としての埋蔵量は、石油の約 60 年分ほどというものと比較して、長期であり、資源枯渇により問題が発生するにしても石油の後だから、と楽観する向きが、一般的です。
しかし、資源埋蔵量見通しは大きく振れることがありますし、また、資源産出国が大きく偏在しているという問題もありますので、余裕があると手放しで楽観することもできません。
( 2007 年 USGS による予想では、2030 年代にリン鉱石生産ピークを予想し、リン枯渇に関する議論を活発にしました。しかし、2010
年 IFDC による予想では、モロッコを中心に経済埋蔵量が増加し、世界総量が約 3 倍ほどに増加し、当面の枯渇はないとされています。上記資料は、IFDC
予想に基づいています。)
鉱物資源ですので、採掘される鉱物の品位低下についても心配されるところです。現在でも多くの場合、採掘に当たって、ウラン、カドミウムなどが含まれていることが多く、資源採掘地は公害問題を抱えています。
予想されている品位低下の範囲内で、採掘が継続することを期待していますが、実際に採掘してゆくまではわからない部分があります。
限られた産出国から輸出停止などの、資源制約を受けた場合、肥料の枯渇は、即ちに生産量に影響します。具体的には、1/2 ほどへの減少が目安になります。日本の農地は、世界的にみれば豊かな土地ではありません。しかも、高温多湿の気候のため、雑草は沢山生え、病虫害も発生しやすいです。イメージとしては、少ない肥料が広がっている土地というところです。だから、肥料を追加投入すれば効果があり、実際に 2 倍ほどの増収になってきました。
現時点では、心配しなくてはならない資源埋蔵量予想ではありませんが、国内で産出せず、植物の身体を作る上で代替物がなく、制約を受けた場合国内自給率に大きな影響を与えますので、継続的な注視が必要です。
有機肥料は、動物・植物の身体・排泄物のリサイクルと言う側面を持つために、動物性であれば、摂取した飼料( 遺伝子組み換え作物が認められています
)・抗生物質や成長ホルモンなど投与された薬剤の生体濃縮などが問題になりますし、植物性であれば、遺伝子組み換え種子の利用・生育時の自然環境・生育する上で吸収した水など、が重要です。
そういう意味で、動物性有機肥料には難点が多く、また、植物性有機肥料も輸入がおこなわれている、あるいは、油粕などに、遺伝子組み換え作物が原料として用いられている現状を踏まえると、安易に用いることができません。
私どもは、栽培環境の良さを基準にセレクトした圃場の、その周辺地域に由来する植物性原料に限定して、植物性有機肥料を使用しています。
化学肥料は、リン・カリについては、植物・動物の身体を作った、根本的な天然鉱石資源そのものを原料にしているだけなので、問題を感じません。
有機リン肥料・有機カリ肥料は、それを摂取して成長した植物・動物をリサイクルして、肥料として再利用しているわけで、元は天然鉱石資源です。
むしろ、成長の過程で取り込んだほかの有害物質につき、可能性を含めて検討する必要が無い分、化学肥料の方が安全性について判断し易いです。
そういう意味で、化学肥料について、必要な量を投入するに留める限りにおいて、安全性の心配はなく、私どもは、化学肥料の利用について問題がない、と考えています。
有機肥料において摂取した飼料などについて安全性をすべて精査してから利用するよりも、化学肥料を利用する方が、より確実に安全と言えると考えています。
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