米を流通統制、供出のために作られた、官製組織である農業会を起源とした JA は、食糧管理法( 1942 年 - 1995 年 )に規定された、政府への米売り渡し義務を始めとした、食糧管理制度の下で、許可された機関として米流通に大きなシェアを持つ存在として取り組んできました。
食糧管理法が廃止され、旧食糧法( 1995 年 )を経て、新食糧法( 2004 年 )において、農家が直接消費者へ販売することにほぼ制限がなくなった今や、いわゆる自主流通米は、個人需要全体で一定の割合を占めるまでになってきています。
( 以上 2 点 引用:農水省 米流通をめぐる状況 2008 年 10 月 )
少し古い 2008 年のデータですし、データの遺漏による合計の不整合もあるのですが、全体の傾向として、
全生産量 855 万T のうち、販売分が 631 万T 、農家自家消費分 165 万T 他 59 万T。
全生産量 855 万T のうち、加工業務用が 280 万T、家計消費用が農家自家消費分を含めて 465 万T 他 110 万T。
家計消費用 465 万T のうち、生産者直接販売が農家自家消費分を含めて 300 万T、小売業者他 165 万T。
となっていることがわかります
米は、加工業務用 280 万T に匹敵する量である、家計消費用 300 万T を生産者が直接供給していて、JA は、卸売りなどを経由する分を含めると、加工業務用出荷が中心になっていることがわかります。逆に、外食産業や食品産業向けの加工業務用に対して、生産者直接販売はほとんどおこなわれていません( 5 万T )。
生産者直接販売は、市場価格の影響を受けないわけではありませんが、リニアに連動するわけではなく、有機栽培による無農薬米であれば、現実に大きな価格差を受け入れてもらえる場合があります。だから、差別化により価格を上げてゆきたい農家は生産者直接販売を試しますし、結果、JA 経由で市場を通す分が、仕入れ価格センシティブな外食・食品加工業務用中心になるのは、当然の流れです。そして、ここが需給ルーズによる小売価格低下の影響をもろに受けている。
JA も組織ですから、構成員である農家の意向を反映します。戦後、農地改革により、全国すべての農家が小規模・零細農から始まりましたが、農政の営農規模拡大政策により、農家間でその営農規模に格差が生じた結果、多くの地域
JA では中・大規模農家の発言力が増しています。小規模・零細農中心のままに留まっているのは、規模拡大余地の少ない、限界地域や中山間地にある地域
JA が多いでしょう。営農規模の点で、構成員の分布に大きな乖離がありますので、地域 JA について一括りで語るのは困難なことです。
とは言え、中・大規模農家の発言力が強い地域 JA を営農規模拡大志向 JA と呼ぶことにするならば、多くの地域 JA が営農規模拡大志向 JA に分類されます。
JA 改革において、JA のガバナンス強化を目的に、全 JA の理事過半を認定農業者や実践的能力者等へ変更していった( 改正農協法 2016 年 )ことが、この流れに拍車をかけたのですが、後で詳述します。
ちなみに、JA は、取扱業務ごとに、
・JA を代表し、また、営農指導などに当たる、国単位の JA 全中、
・農産物の売買や農業資材の購入をおこなう、国単位の JA 全農、都道府県単位の県 JA、あるいは、JA 経済連、
・信用事業をおこなう、国単位( 一部の都道府県 )の JA バンク( 農林中央金庫 )、
等にピラミッド構造化されていますが、
・直接的には、市町村単位の JA( 604 農協:地域 JA・単位 JA )が業務をおこなっています。
個々の農家は、地域 JA と取引をおこなうのですが、収穫時の農作物売上金を担保に、日々の農業資材の購入における与信を JA から受けています。経営的には、自己資本で賄うべき運転資金を、短期借入金で賄うことは、日本の中小企業では一般的にみられることですが、農家でも同様です。個々の中小企業が銀行と対立できないように、個々の農家にとって、地域 JA と対立できない制約になっています。
小規模・零細農家にとって、運転資金の多くは生活費ですから、その分を貯蓄する( 自己資本化 )ことで、運転資金を借り入れに頼らなくて済むようになります。言うほど容易ではないということはわかりますが、農産物の収穫・販売までの生活費などを借り入れに頼っているうちは、どうしても依存関係になります。
小規模・零細農家は、兼業をしていますが、地方では、地方公務員、郵便局、電力会社、地域 JA くらいしか労働需要がありません。ですので、JA との関係は、運転資金以外にも副収入のアテという側面があります。実際のところは、副収入も運転資金と並び、依存関係に影響しているものと思います。
農業資材の購入は、農業資材屋、ホームセンターなどでも扱いがあるでしょうから、上記資金繰り問題を別にすれば、状況は変わるでしょう。JA 全農は農業資材の購入を、各地域
JA を代表・集約して、各メーカーよりおこないますが、全国の地域 JA に対して一律価格ではなく、購入金額に応じて、販売価格を決定しています。ですから、農業資材屋、ホームセンターの方が、小規模
JA には有利な場合があるかもしれません。
上記はその気になれば、代替する方法を見出すことはそれほど難しいことではありません。運転資金の借り入れも、農業資材の購入も他で手当てすることができます。農業関連補助金の窓口と言う機能( 営農指導 )もありますが、運転資金の借り入れや農業関連補助金による収益補填は、それらに依存しない独立自営を目指すのであれば、( 運転資金与信に加えて )営農指導もいずれ必要では無くなるものです。
JA が個々の農家に対して不可欠な役割を果たしているのは、系統流通です。( JA → 市場 → 卸売業者・小売業者など→外食業者・消費者など )
米の供出のために作られた官製組織が前身ですので、大量流通に向いた販路であり、実際のところ、上記の通り外食産業・加工食品製造業向け販売に収れんしてきています。
では、JA の系統流通の性格を形作っているのは、何でしょうか?
それは、市場を通じた価格決定であり、それを可能にする規格化( 農産物検査法 )であると考えられます。
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